メンタリストDaiGo氏が踏み越えた一線 YouTubeの責任は?

「メンタリスト」という肩書で活動するDaiGo氏が、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」で「ホームレスの命はどうでもいい」などと、路上生活者や生活保護受給者を差別する発言をした問題を受け、専門家の間で、インターネットサービスを展開するプラットフォーム事業者の責任を問う声が出ている。DaiGo氏は13日夜に一転して謝罪したが、インフルエンサーの問題発言に事業者側はどう対処すべきかという課題は残されたままだ。【木許はるみ/デジタル報道センター】

 ※記事では差別表現も取り上げています。閲覧にご注意ください。

 DaiGo氏は、人の心理を見抜く「メンタリスト」を名乗って活動。「自分を操る超集中力」「人を操る禁断の文章術」「超決断力」など多数の著書があり、テレビのバラエティー番組にも出演してきた。

 2013年1月には「メンタリストDaiGo」のユーチューブチャンネルを開設。生活習慣や生産性に関する情報を発信してきた。チャンネル登録者数は246万人。公式ツイッターのフォロワーは76万9000人。若者に人気のインフルエンサーだ。

 問題となったのは、8月7日のライブ配信の中で視聴者の質問に答える形で言及した発言。ホームレスの人について「自分にとって必要のない命は僕にとって軽いんで。だからホームレスの命はどうでもいい。いない方が良くない? 邪魔だしさ、プラスになんないしさ、臭いしさ、治安悪くなるしさ。もともと人間は自分たちの群れにそぐわない、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きている。犯罪者を殺すのだって同じ」と述べた。また、生活保護受給者に対しては「生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救ってほしい」「生活保護の人が生きてても僕は別に得しない。猫は生きてれば僕は癒やされる」などと語った。

 直後から「優生思想に直結する」「差別と攻撃をあおる」などと批判が殺到。動画は26万2000回以上再生されたが、13日午後8時までに非公開になった。12日深夜から13日にかけ、質疑応答のライブ配信をし、炎上について語ったが、この動画も13日午後3時までに非公開となっている。

一転して謝罪「無知が招いた失態」

 13日夜になり、DaiGo氏はライブ配信で次のように謝罪した。「ホームレスの人、生活保護を受けている人は働きたくても働けない人がいる。これから頑張って働くために、一生懸命、社会復帰を目指して生活保護を受けながら頑張っている人、支援する人がいる」として、「助けたいと思っている人、そこから抜け出したいと思っている人に対して、さすがにあの言い方はちょっとよくなかったというので、差別的であるし、ちょっとこれは反省だなということで、今日はちょっとそれを謝罪させていただきます。大変申し訳ございませんでした」と頭を下げた。

 さらに、ホームレスや生活保護に至った理由を知らずに批判したことに触れ、「無知が招いた失態」と述べた。「活動自粛しますみたいなことをやってもいいですけども、それよりかはちゃんと勉強しようかなと思って」と話し、北九州市で生活困窮者を支援するNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の奥田知志理事長のもとで、当事者のことを学ぶ考えを示した。「本当に今回は僕がちょっとエスカレートしすぎてしまったのが大きな問題であって。言っちゃいけないことをね、立場的な部分も含めてですけど」と続け、改めて陳謝した。

香山リカさん「表現の自由越えている」

 精神科医でヘイトスピーチに詳しい香山リカさんは、問題となったDaiGo氏の発言について「身近な人以外の他者に対する想像力や思いやりが感じられない。命の尊厳や平等という社会の理想をあえて否定するかのような考えだと思った」と話した。

 DaiGo氏は、問題点を指摘する人たちに向け、「そんなに助けてあげたいほど大事なら、口出すよりも金出してあげたら」などとツイートしていた(削除済み)。これに対して、香山さんは「誰もが生きやすい社会は、篤志家のような個人ではなく、社会や政治がつくるもの。この視点が抜け落ちており、民主主義を否定する言い方ではないか。非正規滞在の外国人を収容する入管の問題でも、外国人保護を訴えると、だったら自分で救えばいいだろうと言う人がいる。そういう定型句の一つだろう」と指摘した。

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